目次
1.経営力向上計画とは
経営力向上計画の策定と支援は、中小企業等経営強化法で規定されている中小企業・小規模事業者や中堅企業を支援するための制度です。
中小企業・小規模事業者や中堅企業の「本業の成長」のために必要な、事業の生産性を向上を図るための活動を集中的に支援するために中小企業庁が平成28年7月1日から開始している支援制度です。
2.経営力向上計画作成のメリット
2.1 各種補助金申請時の加点
経営力向上計画を策定し認定を受けると各種補助金を申請する時に加点となり、補助金の申請が通りやすくなるというメリットがあります。
平成29年度に公募された(公募中のものも含みます)補助金で経営力向上計画を策定していると加点となる補助金の例はを挙げてみます。
①ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金
いわゆる「ものづくり補助金」です。1次申請は2018年5月1日に電子申請の受付を終了していますが、この後2次公募が予定されています。そのため、1次公募時に申請を断念された方や経営力向上計画の加点の話しを知らずに採択されなかった方は検討の余地が高いといえます。
公募要領の8ページには、「(1)審査における加点」という記載がありますので、参考に記載します。
(1)審査における加点項目
①生産性向上特別措置法(案)(平成30年通常国会提出)に基づいた、固定資産税ゼロの特例を措置した自治体において、当該特例措置の対象となる先端設備等導入絵計画の認定企業
②有効な期間の経営革新計画の承認(申請中を含む)、又は経営力向上計画の認定(申請中を含む)、又は地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認(申請中を含む)のいずれかを取得した企業
③総賃金の1%賃上げ等に取り組む企業
④小規模型に応募する小規模企業
⑤九州北部豪雨の局地激甚災害指定を受けた市長村に所在し、被害を受けた企業
複数の加点項目が挙げられており、それぞれの項目が何点加点されるかの記載はありませんが、経営力向上計画の認定は、他の加点項目と比較して達成可能性が高い内容ですので、採択の可能性を高めるためには申請をしておきたい内容といえます。
②小規模事業者持続化補助金
経営計画に基づいて実施する販路開拓や業務効率化の取り組みをする小規模事業者を対象にした補助金です。
小規模事業者は業種毎の従業員数を基準に判定します。卸売業・小売業、サービス業(宿泊業、娯楽業以外)は5人以下、製造業、サービス業(宿泊業、娯楽業)は20名以下の従業員数(常時使用する従業員)であれば申請対象の企業になります。
採択されると、原則50万円を上限に補助金(補助率2/3)が支給されます。
公募期間は、平成30年3月9日~平成30年5月18日です。
小規模事業者持続化補助金の採択審査時に加点になるのは、①生産性向上、②経営力向上計画の2つだけです。
生産性向上の加点を得るためには、先端設備の導入が前提になりますので、設備導入を予定していない企業の場合には、経営力向上計画の認定が唯一の加点項目となります。
③事業承継補助金
事業承継をきっかけに経営革新や事業転換を挑戦する中小企業を支援するための補助金です。
公募期間は平成30年4月27日~平成30年6月8日です。
④まとめ
経営力向上計画は、生産性向上に取り組む中小企業を支援するための制度ですので、補助金の中でも生産向上に関連するものは加点対象になっています。平成30年度以降も中小企業の生産性向上につながる補助金については加点対象として継続される可能性が高いと思いますので、補助金申請時に経営力向上計画の認定の準備時間がないという事がないように今から来年に向けて準備を進めるのが良いと思います。
2.2 金融支援
経営力向上計画の認定を受けると主に以下の内容の金融支援を受けることができます。
①日本政策金融公庫による低利融資
設備投資に必要な資金の融資を日本政策金融公庫から受けるときに、利率が基準利率より0.9%引き下げられます。
運転資金はNGです。また、経営力向上計画の認定を受ける前に日本政策金融公庫に事前相談をしておく必要がある点が留意点となります。
②中小企業信用保険法の特例
経営力向上計画を実行するために民間の金融機関から融資を受ける必要がある場合に、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大を受けることができます。
新商品や新サービスなど、「自社にとって新しい取組」(新事業活動といいます)をする場合に、限定されますので、経営力向上計画を策定する時の記載方法に注意する必要があります。また、今回取り上げていない金融支援策の全てについて共通しますが、やはり事前に金融機関への相談が必要になります。
2.3 税制面の支援
①固定資産税の特例(3年間半額になる)
平成29年4月1日~平成31年3月31日までに経営力向上計画にもとづき、一定の設備を取得した場合には固定資産税が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
取得する設備は、①一定期間内に販売されたモデルで、②経営力の向上に資するもの指標(生産効率、エネルギー効率)が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備である必要があり、工業会等からの証明書を入手して経営力向上計画の申請時に証明の番号の記載が必要になります。
また、対象となる設備については、一部の地域で対象業種が限定されますので、事前にご相談頂ければと思います。
②中小企業経営強化税制(即時償却または取得価額の10%の税額控除の選択ができる)
①と同様に、平成29年4月1日~平成31年3月31日までに取得する一定の設備については、即時償却と税額控除という税金面のメリットを受けることができます。
設備購入に必要となった金額の一部を通常よりも多く費用(正確には損金)にする(即時償却)、又は直接(税額控除)税金の支払額を減少させることができます。
一定の設備には、①生産性向上設備(A類型)と②収益力向上設備(B類型)がありそれぞれ以下のように対象が限定されています。
○生産性向上設備(A類型)
・要件:生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
・確認者:工業会等
・対象設備:◆機械装置(160万円以上/10年以内)◆測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内)◆器具備品(30万円以上/6年以内)◆建物附属設備(60万円以上/14年以内)◆ソフトウエア(情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの)(70万円以上/5年以内)
・その他要件:生産等設備を構成するものであること(事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等は該当しません。)/国内への投資であること/中古資産・貸付資産でないこと等
○収益力強化設備(B類型)
・要件:投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
・確認者:経済産業局
・対象設備:◆機械装置(160万円以上)◆工具(30万円以上)◆器具備品(※1)(30万円以上)◆建物附属設備(※2)(60万円以上)◆ソフトウエア(※3)(70万円以上)
・その他要件:生産等設備を構成するものであること(事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等は該当しません。)/国内への投資であること/中古資産・貸付資産でないこと等
B類型の場合には経済産業大臣(経済産業局)に投資計画の確認を受けたうえで、経営力向上計画の申請をする必要があります。そのため、優遇措置を受けるための準備黄期間が通常より2~3週間必要になるとお考え下さい。
3.まとめ
経営力向上計画の策定のメリットは大きく分けて3つありますが、金融支援と税制面のメリットは資金調達と設備投資の必要な時に限定して受けられるものです。
一方で、補助金の加点は、補助金の内容によって加点対象となるか否かが補助金の公募がされるまでわかりません。そのため、自社にとって有利な補助金が公募される時に備えて経営力向上計画の認定を受けておくことは中小企業にとって有用だと思います。
また、経営力向上計画は、認定を受けた後に修正申請することが可能です。そのため、一度取得した後に計画の内容を修正することで、資金調達や設備投資が必要な時に金融支援と税制面のメリットの享受を選択肢にいれることができます。
経営力向上計画の認定による、補助金の活用、金融支援、税制面の支援を受けることは、中小企業の経営の選択肢を増やします。また、補助金、経営力向上計画の申請を通じて自社の経営の見直しの機会にもなるでしょう。
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