経営力向上計画は、「事業分野別指針」が策定されている事業分野(業種)については、当該指針を踏まえて策定する必要があります。今回は、事業分野別指針が策定されている卸売業の経営力向上計画の策定方法について説明します。
なお、経営力向上計画策定のメリットについては、こちらの記事を、経営力向上計画策定のポイントについてはこちらの記事も参考どうぞ。
目次
1.卸売業における経営力向上の目標とする指標及び数値
卸売業の場合には、経営力向上の目標とする指標は、労働生産性になります。
製造業のように、労働生産性、売上高経常利益率、付加価値額からの選択ではありませんので、ご注意下さい。
また、計画期間は3年間~5年間になります。
計画期間が5年の場合には、5年後までの目標伸び率を2%以上、4年間の場合には1.5%以上、3年間の場合には1%以上に設定する必要があります。
2.卸売業における経営力向上の内容
卸売業の場合には、経営力向上のために取り組む内容が決まっており(以下:卸売業の指針)、事業規模に応じて取り組みが必要になる数が異なります。
卸売業の指針は、以下に挙げる内容となり、目標として掲げる労働生産性の数値を達成するために必要と考えるものを選択します。
イ.経営状態の把握
(ⅰ)自主管理指標の活用
(ⅱ)経営全体のマネジメント
ロ.IT及び設備並びに物流効率化手法等の利用
(1)IT及び設備に関する事項
(ⅰ)ITの推進
(ⅱ)設備の省エネルギー及び省力化の推進
(ⅲ)ロボットの導入又は増設
(2)物流業務の効率化等に関する事項
(ⅰ)受発注業務における、EDIの導入により業務効率の向上
(ⅱ)庫内作業における、入庫及び出庫作業の標準化、電子タグの活用等による物流業務の効率化
(ⅲ)配送業務における、他の事業者と連携又は共同による、同一地域における自動車の数を減らすことによる効率化
(ⅳ)品質保持の必要な商品について、コールドチェーンの整備
ハ.営業活動の強化
(1)取引先支援(リテールサポート)の強化に関する事項
(2)新規取引先の開拓及び商圏の拡大に関する事項
(3)取扱商品の差別化に関する事項
二.人材育成の強化
経営幹部も含めた人材の教育訓練計画を作成する。
2.1.小規模卸売業(売上高3億円未満)の場合
売上高が3億円未満の卸売業が選択する、上記イ~二の経営力向上の内容の具体例は以下の通りとなります。
イ.経営状態の把握
・事業所毎の損益管理
・PDCA管理の徹底
ロ.IT及び設備並びに物流効率化手法等の利用
・管理部門のIT化
・業務の標準化
・省エネルギー設備又はロボットの導入
ハ.営業活動の強化
・取扱商品の専門的な品揃えの充実
・ホームページの作成及び充実による商品情報等の発信
・インターネット販売の実施
・商圏を異にする卸売事業者との共同での自社商品の開発
二.人材育成の強化
・外部の公共機関
・事業者団体等が主催する研修会等を活用した多能な人材育成
2.2.中規模卸売業(売上高3億円以上30億円未満) の場合
売上高が3億円以上30億円未満の卸売業が選択する、上記イ~二の経営力向上の内容の具体例は以下の通りとなります。小規模業者の場合に記載されていない取り組みは赤字で記載しています。
イ.経営状態の把握
・事業所毎の予算策定と予実管理
・PDCA管理の徹底
ロ.IT及び設備並びに物流効率化手法等の利用
・業務の標準化
・保管、配送等の業務の他社との連携又は共同化
・電子的な受発注システムの導入等による業務の効率化、新規顧客の獲得等のための情報の高度利用
・省エネルギー設備又はロボットの導入
ハ.営業活動の強化
・取引先支援(リテールサポー ト)体制の強化
・取扱商品の専門的な品揃えの充実
・ホームページの充実による商品情報等の発信
・インターネット販売又は直営店の開設による消費者等ニーズの収集
・商圏の拡大(国内)
二.人材育成の強化
・教育訓練計画の作成
2.3.中堅卸売業(売上高30億円以上) の場合
売上高が30億円以上の卸売業が選択する、上記イ~二の経営力向上の内容の具体例は以下の通りとなります。中規模業者の場合に記載されていない取り組みは赤字で記載しています。
イ.経営状態の把握
・事業所毎の予算策定と予実管理
・事業所を支援する本部機能の強化
・PDCA管理の徹底
ロ.IT及び設備並びに物流効率化手法等の利用
・業務の標準化
・保管、配送等の業務の外部委託の検討
・電子的な受発注システムの高度化等による業務の効率化
・新規顧客の獲得等のための情報の高度利用
・省エネルギー設備又はロボットの導入
ハ.営業活動の強化
・取引先支援(リテールサポー ト)体制の強化
・取扱商品の総合的な品揃えの充実
・ホームページの充実による商品情報等の発信
・ボランタリーチ ェーン組織の構築
・インターネット販売又は直営店の開設による消費者等ニーズの収集
・商圏の拡大(海外)
二.人材育成の強化
・教育訓練計画の作成
・部門別教育体制の構築
3.まとめ
卸売業の場合には、経営力向上の目標とする指標は、労働生産性を選択する必要があります。
取り組むべき経営力向上の内容は、事業規模に応じて事業分野別指針の中から必要な数を選択する必要があります。事業の状況に応じて選択するな内容は変わりますが、取り組み内容として実行しやいのは、「ロ(1)(ⅰ)ITの推進」で勤怠管理システムやクラウド会計の導入(MFクラウド会計へのリンクです)が挙げられます。いずれも低コストで業務時間の削減を取り組みやいものになると思います。
経営力向上計画の申請はしたいが、時間がない、目標指標の算定に自信がない等でお悩みのある方は、お気軽にお問合せ下さい。
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