設立

会社を設立した時に提出が必要な4つの書類

会社を設立した後に提出するのを忘れてはいけない書類があります。
個人事業主として開業した場合ではなく、法人を設立した場合に提出が必要な書類です。
注意点を含めて記載します。

目次

1、これだけは抑えておきたい4つの書類

ますは、これだけは忘れずに提出したい重要な書類について記載します。
忘れずに提出したい重要な書類は4つあります。
税理士事務所や会計事務所では4点セットと読んだりする事もあります。会社設立後に新しく税理士と顧問契約を締結する時には、これらの書類について「提出していますか?」か確認されるはずで、会計事務所にも控えを提出する事になると思います。
詳しい内容までは理解しなくても良いので、まずは4つの書類を提出しているかをチェックして頂ければよろしいかと思います。

①法人設立届出書

設立の日(設立登記の日)以後2カ月以内に「法人設立届出書」を納税地の所轄の税務署に提出する必要があります。
法人設立届出書の様式は、国税庁ホームページで入手することができます。記載の内容は難しいものではありませんので問題ないでしょう。国税庁のホームページに掲載されている法人設立届出書の様式の2ページ目には記載上の注意点もありますので確認の上ご記入頂ければよろしいかと思います。
e-taxというソフトで電子申請することも可能です。会計事務所によっては無料で代理作成、申請をしてくれる事務所もあると思います。
提出する時に添付書類として「定款の写し」が必要です。忘れないように注意しましょう。なお、従来は登記事項証明書も提出が必要でしたが、平成29年度4月1日以降添付が不要になっています(参照;国税庁ホームページ

重要設立届出書は税務署だけでなく都道府県、市区町村へも提出が必要です。会社を設立すると税金を支払う必要があるのですが、税金には国に支払う税金と地方に支払う税金があるんです。そのため、各都道府県の県税事務所と市区町村の役所にも設立開始の
届出をする必要があります。

コラム(失敗事例)過去の失敗話しになるのですが、会社設立初年度の法人税の申告を無事完了し「ほっ」とした後の事です。暫くして税務署から謀県庁から連絡がありまして、地方税の均等割りの納付は確認できたが、そもそも設立届出がされていないため速やかに対応するように指摘を受けました。それ以降、新しいお客様と契約をする時には届出関係の書類の提出状況は必ず確認し、コピーも保管するようにしています。

②青色申告の承認申請書

個人事業主の場合に青色申告という用語はよく耳にすると思いますが、法人にも青色申告とう制度があります。
青色申告承認申請をしてと税金の支払いを少なくすることができる特典があるので、法人を設立した後には必ず提出した方が良いで書類です。
青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までに、納税地の所轄の税務署に提出する必要があります。

青色申告の特典法人が青色申告をする場合の特典としては、「欠損金の繰越控除」というものがあります。簡単に内容を説明すると、過去の赤字を繰り越して、利益が出た時に相殺することができるという内容です。例えば、会社を設立したばかりの場合には、支出が先行するので赤字になることが多いです。3年後に事業が軌道に乗ってきて利益が出るようになった時にも、過去の赤字を利用できるので税金の支払いが少なくなる可能性が高まります。平成28年度の改正により平成30年4月1日以降に設立した会社の場合には、10年間欠損金を繰越すことができるようになりました。会社を設立して間もない場合には、節税をいろいろ考えるよりも、税金の少なくする効果があったりします。

③給与支払事務所等の開設届出書

会社を設立して新たに給与の支払いをすることになる場合には、会社設立後1カ月以内に給与支払事務所等の開設届出書を提出する必要があります。
(社長1人だけの場合には給与支払事務所等の開設届出書を提出しなくて良いのか?)
個人事業主の場合には、売上から経費を引いた残りが所得になるので創業者本人への給与の支払いという問題は生じません。一方で、法人を設立した場合には、まだ社長(=創業者)1人で会社を運営している状況であったとしても社長に給料を払う場合には役員報酬という形で法人から支給することになります。個人事業主の場合と異なり法人の場合には、役員報酬を計上することで節税をできる可能性があります。そのため、法人設立届出書等と合わせて提出するのが良いでしょう。

税金の基礎知識会社が、人を雇って給与を支払いをする等の場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引くことになっています。そして、差し引いた所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納める必要があります。この所得税及び復興特別所得税を差し引いて、国に納める義務のある者を源泉徴収義務者(源泉徴収義務者の詳細は国税庁ホームページを参照)といいます。

(役員報酬がまだ支払えない場合には給与支払事務所等の開設届出書は提出しなくて良いのか?)
会社設立後社長1人だけの状況で、事業も軌道に乗っていないので自分への給与は支払うことはできないというケースは多いと思います。
その場合には、給与支払事務所等の開設届出書が必ずしも提出する必要はありません。ただし、いずれは給与の支払いをすることになりますし、役員報酬の支払いをして節税を図る上では毎月同額の支払いが必要になるというルールがあります(詳細は、国税庁ホームページ参照)。実務上、役員報酬を決める上では、税理士と相談して決めて頂くのが間違いないと思います。)ので、会社を設立したタイミングでの提出をおすすめします。

④源泉所得税の納付の特例の承認に関する申請書

源泉所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。しかし、給与の支給人員が常時10人未満の場合には、源泉所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります(特例の詳細は、国税庁ホームページを参照)。会社設立したばかりの場合には、給与の支払いをすることがあっても従業員数や給与の支給金額も多くなることはないので、源泉所得税の金額が多額になることは余りないでしょう。例えば1月の負担が数百円~数千円の時もあると思います。それなのに毎月、税務署や銀行等の金融機関に支払いを行う(ペイジーでの支払いも可能ではありす。)のは手間がかかると思います。源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出しておけば、半年毎にまとめて支払いができますので事務負担が軽減できますし、支払い漏れや遅延によるペナルティーを防ぐこともできます。そのため、給与支払事務所等の開設届出書と合わせて提出するのが良いでしょう。

2、その他の提出書類

①消費税関係

会社を設立する時、資本金の額(又は出資の金額)を1,000万円以上に設定した場合には消費税の新設法人になります。その場合には、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を速やかに税務署に提出する必要があります。ただし、法人設立届出書に消費税の新設法人に該当する旨及び所定の記載事項を記載して提出した場合には、この届出書の提出は不要です。

②棚卸資産の評価方法の届出書

棚卸資産とは、販売を目的として会社が保有する製品や製品になる前の仕掛品や材料等の在庫のことをいいます。この棚卸資産の評価方法には、以下の6通りの方法があり、それぞれに原価法と低価法の2パターンがあるので、税務上は全てで12通りの方法を選択することができます。
・個別法
・先入先出法
・後入先出法
・総平均法
・移動平均法
・売価還元法
・最終仕入原価
「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出しない場合には、原則的な方法である「最終仕入原価法」で評価をすることになります。しかし、他の方法を選択した方が良いケースもありますので、その場合には届出書を提出した方が良いことになります。この届出書の提出期限は、設立第1期の確定申告書の提出期限までになりますので、実務的には年間の帳簿の記録や決算作業を手伝ってもらう公認会計士、税理士の先生と相談しながら決めるのが通常です。

届出を提出しないと損をする事例「棚卸資産の評価方法の届出書」の届出を提出しない場合に損をするケースについて簡単に考えてみたいと思います。会社(設備機械を販売する会社)を設立した。設立1年目には3回(3個)設備機械を仕入ている。1回目の仕入は5,000千円、2回目の仕入は7,000千円、3回目の仕入は10,000千円であった。1回目に仕入れた商品は20,000千円で販売した。期末には、2回目と3回目に仕入れた商品が残っている。
この場合に、原則的な方法である最終仕入原価法により在庫の評価を行うと在庫の金額は10,000千円×2個で20,000千円になります。その結果、利益は18,000千円になります。一方で他の評価方法である先入先出法の場合には利益15,000千円、移動平均法の場合には利益12,667千円です。他の費用がない前提で考えると原則的な方法の場合が一番利益が大きく、税金の支払金額が多くなることが分かります。

(最終仕入原価法の場合)
売上高 20,000
期首製商品  0
当期商品仕入高 22,000
期末商品 20,000
売上原価 2,000
利益 18,000

(先入先出法の場合)
売上高 20,000
期首製商品  0
当期商品仕入高 22,000
期末商品 17,000
売上原価 5,000
利益 15,000

(移動平均法の場合)
売上高 20,000
期首製商品  0
当期商品仕入高 22,000
期末商品 14,667
売上原価 7,333
利益 12,667

今回の事例は、評価方法の違いが分かりやすいように、取引数が少なく仕入単価が上昇していく極端な事例になっていますが、原則的な方法の場合には最終仕入の単価で評価を行えば良いので取引量が多くなっても簡単に計算ができるというメリットはあります。一方で期中に価格の変動が多くある場合には利益の金額がぶれるので納税額が多くなる可能性があることが分かりますね。銀行から借入をする上では決算上の数値は良い方が有利ですし、そもそも会社を経営する上では利益を増やすために経営をするべきなので、納税額が多くなることが損をするという表現は本来は適切ではありません。また、それぞれの評価方法を選択する上では会社の経営実態を表現できて、かつ実務上の制約(時間やコスト)も考えて選択すべきと考えていますが、評価方法の選択によって利益の計算結果が異なるということを少しでも理解して頂ければと思います。

③減価償却資産の償却方法の届出書

減価償却と資産とは、該当する資産を取得するために支出した金額を一定の期間に渡って配分していくことになる資産です。
例えば、事務所等の建物の工事代金、設備装置、機械、ソフトウェアなどなど。
これらの資産は支出金額が大きくなりますが、将来の何年間に渡って役に立つものです。そのため、購入した期間だけでなく将来の一定期間に渡って費用は計上することができます。ちなみに土地は償却資産ではありません。売却、処分するまでは取得した時の金額で計上されます。減価償却資産の支出金額を将来に渡って費用配分していく方法は、主に定額法と定率法がありますが、何も申請しない場合には以下の方法が適用されます。
・建物‥‥‥定額法
・建物附属設備及び構築物‥‥‥定額法
・機械装置、車輛運搬具、工具器具備品‥‥‥定率法
・無形固定資産‥‥‥定額法
(注意)厳密には資産を取得した年月日により償却方法は異なりますが複雑なので割愛しています(詳細は国税庁ホームページを参照)。
ここで、定額法は毎期一定の金額で費用を配分する方法、定率法は取得年度に大きく費用を計上して徐々に少なく費用を計上して支出した費用を配分する方法です。
機械装置等について定額法を採用したい場合には届出を出した方が良いですが、条件としてあてはまるケースは少ないように思います。
減価償却資産の償却方法の届出書も棚卸資産の評価方法の届出書と同様に、設立第1期の確定申告書の提出期限までに届出る必要があります。

④有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書

有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法は、株式のような有価証券を複数回取得する事がある場合には影響します。算出方法には移動平均法と総平均法があり、有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書を提出しない場合には移動平均法が適用されます。移動平均は同じ銘柄の有価証券を取得する度に平均単価を算定する方法なので、1年間に膨大な取引をする場合には計算の手間がかかります。一方で総平均法は期末にまとめて有価証券の平均単価を算定する方法です。計算の手間は省けますが、期中に有価証券を売却する場合に算定する売却損益が移動平均法と比較して正確にはなりません。

有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書の提出期限は、有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までです。棚卸資産の評価方法の届出書や減価償却資産の償却方法の届出書と異なり必ずしも、設立第1期とは限りません。有価証券を取得することになった場合には税理士の先生に相談してもよいでしょう。

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