創業・開業

士業に報酬を支払う時の源泉所得税 請求書に記載がない場合

会社を設立した時に司法書士や税理士に会社設立事務の代行を依頼したり、会社や個人事業主の場合にも税理士に確定申告書の作成を依頼して報酬を支払うことがあるでしょう。
このような士業への報酬を支払う時には源泉所得税がかかる事があります。
ただし、士業からの請求書を見ると源泉所得税の記載がある場合と、源泉所得税の記載がない場合があり少しややこしいですね。
士業へ報酬を支払う時に源泉所得税の支払いが必要な場合はどのような場合なのでしょうか。

1.源泉所得税の徴収が必要な場合

まず、報酬を支払う側から見ると、源泉徴収義務者に該当する場合には、源泉所得税を納付する必要があると考えれば良いでししょう。
源泉徴収義務者の意味については、国税庁ホームページをご参考にして頂ければと思いますが、法人の場合には士業へ報酬を支払う時には源泉所得税を納付する義務があることになります。また、個人事業主の場合でも3人以上に給与を支払っているような事業の場合には源泉徴収義務があります。

まとめると以下の表のようになります。

支払う側 源泉徴収義務
法人
個人事業主、個人
(給与の支払いがある場合)
個人事業主、個人
(給与の支払いない。給与の支払いが常時2人以下の場合)
×

次に、報酬を受け取る士業の側から見てみましょう。
弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、中小企業診断士、司法書士、不動産鑑定士などに報酬を支払う時には源泉所得税がかかります。
といっても、士業の種類も多いので例外を覚えるのが良いのではないでしょうか。
開業当初に会社設立や許認可申請、契約書作成で行政書士に依頼をすることがあると思います。このような行政書士へ報酬を支払う時には源泉所得税の徴収は不要です。
また、税理士や弁護士に業務を依頼する場合でも、税理士法人や弁護士法人、株式会社との契約の場合には源泉所得税の徴収は不要です。法人への支払いの場合には源泉所得税はかかりませんので。
まとめると以下の表のようになります。

受け取る側 源泉所得税の徴収
弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、中小企業診断士、司法書士等
行政書士 ×
税理士法人、弁護士法人 ×(法人のため)

2.士業からの請求書に源泉所得税の記載がない場合

2.1 ペナルティに注意

以上で士業への報酬時に源泉所得税がかかる場合が理解できたかと思いますが、士業からの送付されてくる請求書に源泉所得税の記載がない場合にはどうすれば良いでしょうか?
源泉徴収義務があるのは、報酬を支払う側の法人や個人事業主にありますので、請求書に記載がなくとも支払わない時にはペナルティが課されてしまいます。
納付をしなかった場合には、納付税額に追加して、納付税額の10%が「不納付加算税」として課税されてしまいます(税務署から指摘を受ける前に自主的に納付した場合は5%)。
さらに、納付が遅れると「延滞税」も課税されてしまいます。1回限りの話しであれば金額は大きくならないかもしれませんが、長期間納付を失念していて、税務調査が入って指摘された場合には高額になることも否定できませんので注意が必要でしょうね。

2.2 源泉所得税の計算方法

請求書に記載がなかった場合に備えて、士業の報酬にかかる源泉所得税の計算方法を記載します。

(1) 弁護士、税理士等の場合
弁護士、税理士等の場合には以下の表の通りです。100万円を超える高額な契約の時には計算方法が変わるので注意が必要ですね。

支払金額(=A) 税額
100万円以下 A×10.21%
100万円超 A-100万円)×20.42%+102,100円

(2) 司法書士、土地家屋調査士及び海事代理士の場合
他の士業の場合と計算式が異なります。報酬金額から1万円を引くという点が異なりますね。
国税庁ホームページから引用すると計算方法は以下の通りです。
「源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、同一人に対し、1回に支払われる金額から1万円を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出します。」

3.源泉所得税の納付方法

3.1 納付書

税理士と契約をしてる方は、案内されるでしょうから問題はないと思いますが、源泉所得税の納付書は税務署で入手することができます。ただし、e-taxで作成して提出することも可能です。紙に手書きで記載する必要がなく、修正のやり直しもデータだと楽なので、便利だと思います。

3.2 納付場所

納付書に記載をした後は、税務署で納付する(郵送もOk)か金融機関の窓口で納付します。
ただし、Pay-easyを利用すれば、銀行のATMやネットバンキングでも納付が可能です。
Pay-easyによるATMやネットバンキングで納付の手順は以下の通りです。

① オンラインバンキングにログイン
② 銀行振込画面(Pay―easy)から納付
③ 下記の番号を入力して納付

・収納機関番号
・納付番号
・確認番号
・納付区分
③に記載した各番号はe-taxを利用して納付書を税務署に送付すると、メッセージボックスの中に「納付区分番号通知確認(受信通知)」というメールが格納され、そのメール詳細の中に記載されます。

3.3 納付期限

源泉所得税の納付は原則として報酬支払い時の翌月10日となります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出している場合には、以下のように半期に1回まとめて支払えばOKになります。
・1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・7月10日
・7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・翌年1月20日

3.4 納付額がゼロの場合

ゼロの場合でも税務署に提出する必要があります。当然ながらこの場合には納付がないので、金融機関の窓口等で対応はできません。

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