日記

株式会社エム・テック社に見る下請け中小企業の対抗手段

1、エム・テック社の事案

平成30年10月20日に株式会社エム・テック社の「民事再生手続廃止並びに保全管理及び包括的禁止命令の発令」が公表されています。
同社のホームページには、資金が枯渇しており、新たなスポンサーを探す余裕もなく、民事再生手続きを継続することは不可能であるため、再建を断念する旨。10月22日付けで東京地方裁判所より再生手続廃止決定がされたうえ保全管理命令が発令され、全ての債権者に対し、強制執行等の禁止を命じる包括的禁止命令を発令した旨が記載されています。
また、今後は、民事再生手続きが廃止されたため、破産手続きへの移行準備期間に入り、約1カ月後に破産手続きが開始される予定であり、その後破産手続きにより清算処理が行われるとされています。


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1.1 エム・テック社の概要

エム・テック社は、1988年設立の総合建設業社。本店は埼玉県さいたま市にあります。
東京の本社以外にも支店が全国に14拠点、営業所や事務所も全国に10拠点あり、平成28年7月期の売上高は265億円、資本金も4億6,637万円と中小企業の範囲を超える規模の会社です。

1.2 帝国テータバンクの記事

帝国バンクの倒産速報記事の抜粋は以下の通りです。負債は、申請時点で債権者数約887名に対し約253億4933万円とされています。
「当社は、1988年(昭和63年)10月に設立された総合建設業者。自社独自のPC(プレストレスト・コンクリート)工法や橋梁工事におけるPCF工法を有し、国土交通省や東日本高速道路、埼玉県やさいたま市など官公庁からの元請けを中心とした受注形態で実績を残していた。PC構造物の土木用橋梁桁や土木用セグメント、建築用柱などの資材販売も展開。東日本大震災の直後は受注が激減していたが、近年は震災復興需要もあって関東圏や東北地方を中心に受注が回復し、2015年7月期には年売上高約245億6900万円を計上していた。
しかし、業況が比較的堅調であるにもかかわらず慢性的に支払いトラブルを抱えるなど、経営体制の安定性が懸念されていたうえ、売上規模の拡大に伴い資金需要も増加していた。従前から、全国の工事業者や産廃関連業者などを傘下に入れ事業領域の拡大を進めるなかで、不透明な取引などから2017年12月に民事再生法の適用を申請した(株)PROEARTH(神奈川県厚木市、建機販売)のスポンサーとして名乗りを上げたものの、最終的に撤退を表明し同社は翌2018年2月に破産手続きに移行するなど、当社の動向が注目されていた。加えて、3月に東京地方検察庁から港則法違反で起訴されたことを受けて、全国各地の自治体から指名停止処分を受けるなど業況が悪化していた。
この度、民事再生手続きのなかでスポンサー交渉が不調に終わり、自主再建のメドも立たないことから、今回の措置となった。」

1.3 ネット上の評判

ネット上の評判を見ると、「社員の経費精算が数カ月先」という情報があったり、下請け業者が「エム・テック社が未払いで困っている」という相談の情報が見受けられます。
未払いの情報は2009年頃からありますので、売上高が増加していく中で資金繰りの問題は数年前からあったかもしれません。会社の体質という問題もあるかもしれませんが、いずれにしても下請事業者への未払い、支払い遅延という問題は数年前からあったようです。

2、下請け中企業の対抗手段

株式会社エム・テック社の事例のように親事業者から下請事業者に支払いがされないケースや、原材料が高騰しているのに価格を据え置きされてしまうケース、発注を取り消されるケース、注文後の値引きのケース等の場合には下請事業者を保護するための下請法という法律がありますので、簡単に内容をご紹介させて頂きます。

2.1 下請法の概要

下請法は、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的としており、親事業者の義務、禁止行為を定めています。

2.2 下請法の対象となる取引

下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模と取引の内容で定義されています。
下請いじめにあっているなと思った時には、まずは下請法の定義に該当するかを以下の表で確認しましょう。

①物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合

親事業者下請事業者
資本金3億円超資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下(個人を含む)

②情報成果物作成・役務提供委託を行う場合((1)の情報成果物・役務提供委託を除く。)

親事業者下請事業者
資本金5千万円超資本金5千万円以下(個人を含む)
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下(個人を含む)

POINT

・資本金1千万円超が目安になるという事を覚えておきましょう。親事業者が資本金が1千万円以下の場合には下請法の対象になりません。
・下請事業者は個人も対象になります。
・プログラムの作成を下請している場合は、①で判定します。

2.3 親事業者の義務

義務概要
書面の交付義務発注の際は,直ちに3条書面を交付すること。
支払期日を定める義務下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。
書類の作成・保存義務下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。
遅延利息の支払義務支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。

書面の交付義務、作成・保存義務に違反した場合には50万円以下の罰金が課されます。

2.4 親事業者の禁止行為

禁止事項概要
受領拒否注文した物品等の受領を拒むこと。
下請代金の支払遅延下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。
下請代金の減額あらかじめ定めた下請代金を減額すること。
返品受け取った物を返品すること。
買いたたき類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。
購入・利用強制親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
報復措置下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
有償支給原材料等の対価の早期決済有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。
割引困難な手形の交付一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
不当な経済上の利益の提供要請下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。

2.5 下請法違反の場合の勧告・警告

・公正取引委員会は、下請法に違反した親事業者に勧告・警告を行っている。勧告した場合には、親事業者の会社名称等を公表している。

・公正取引委員会は、勧告・警告により親事業者の違法行為を取りやめさせたり、下請代金の減額分を下請事業者に対して返還させている。

なお、公正取引委員会は、下請事業者から、下請法違反のおそれのある行為を行っている親事業者に関する情報の提供(申告)を受け付けていますが、下請事業者の意思に反して直ちに親事業者の事務所等に立入検査を行うわけではありません。
親事業者に対して調査を行う場合には、情報を提供した下請事業者が特定されないように様々な工夫がされるそうです。

POINT

・大企業の場合には下請法違反の公表がされると信頼を失い事業の継続に支障が出る可能性があります。そのため、下請法に違反していることを指摘することで、下請業者の利益が守られる可能性が高いといえます(取引停止等のリスクも少ないはずです。)
・一方で親事業者の販売先や仕入先が限定されている等、会社名等の公表が下請いじめの抑止効果にならないケースも想定されます。そのような場合には、全国に設置されている「下請かけこみ寺」にまずはしましょう。

2.6 下請駆け込み寺事業

中小企業庁では、平成20年度より下請かけこみ寺事業を実施し、下請事業者の取引上の悩みに対応しています。(財)全国中小企業取引振興協会を本部とし、各都道府県にかけこみ寺窓口を設置し、次の3点を中心に事業を行っています。
①各種相談の対応…下請法や中小企業取引に知見を有する専門家が相談対応を実施。また、「弁護士無料相談」も実施しております。
②迅速な紛争解決…中小企業取引の簡便・迅速な解決のため、裁判外紛争解決手続(ADR)により、登録弁護士が調停手続を実施。
③下請適正取引ガイドラインの普及啓発…中小企業に対する「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」の説明会を業種ごとに開催する等、普及啓発を実施。
 下請代金支払遅延等防止法に基づく立入検査等を実施している当局と下請かけこみ寺は相互補完の関係にあり、連携を取りつつ下請中小企業振興業務にあたっています。

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