今年は事業承継に関連する記事も可能な限りアップしていきたいと思います。
今回は、日本公認会計士協会が発行している「会計・監査ジャーナル」という専門情報誌に事業承継支援策についてまとめられた記事がありましたので、これをベースに事業承継に関連する支援策の内容をそれぞれご紹介させて頂きます。
目次
1、事業引継ぎ支援センター
事業承継引継ぎ支援センターは、事業承継に関する公的な相談窓口です。事業承継引継ぎ支援センターは、各都道府県に設置されており、原則として無料で相談を受けることができます。事業承継引継ぎ支援センターの各都道府県の一覧はこちらで確認することができます。
事業承継について、相談をする相手は誰が良いか分からないという方も多いかと思います。そのような場合には、まず公的な窓口である事業承継引継ぎ支援センターに無料相談をするのも良いかと思います。
士業などの専門家が相談対応として配置されていますので、安心して相談できると思います。
事業承継引継ぎ支援センターでは、後継者がいる場合には、アドバイスをしてくれますし、後継者がいない場合にはM&Aの可能性がありますので、譲渡先探しのために登録機関等を紹介してくれたり、マッチングもしてれるようです。
会社の運命、社長の人生を左右する内容なので、最初に相談した際に親身に相談に乗ってくれない場合には、他の機関に相談しても良いと思いますので、まずは相談してみることだと思います。
相談してくれる専門家も全てを知り尽くしている人はいないはずです。事業承継やM&Aについては、法律面であれば弁護士、企業価値評価であれば公認会計士、税務面であれば税理士が専門であるなど、幅広い分野での専門知識が必要です。
事業承継支援はまだまだこれから実績が蓄積されていく段階のものですし、公的機関は外部の専門家と連携して相談者の悩みを解決するために動いてくれるはずなので、親身に相談に乗ってくれるかを重視した方が良いと思います。
専門誌で紹介されていた内容は以下の通りです。ご参照下さい。
「事業承継の準備を始めるとしても、そもそも、親族や従業員に然るべき後継者がいない場合は、第三者に会社や事業を譲り渡す、いわゆるM&Aの活用も、重要な選択肢となります。中小企業のM&Aにおいても、金融機関やM&A専門の仲介事業者等が、売り手、買い手の依頼を受けてマッチングを行っていますが、例えば、小規模な案件までは手数料が見込めず、仲介や取引成立までの様々な手続の支援を行えないといったケースがあります。事業承継引継ぎ支援センターでは、原則として無料で中小企業・小規模事業者のマッチングを支援しています。具体的には、売り手、買い手からの相談を通じて事業承継引継ぎに向けた支援の可否を検討し(一次対応)、各センターの登録機関(金融機関や仲介事業者)に取り次ぎ(二次対応)、登録機関でマッチングできない場合や既にマッチング相手が決まっている場合などは、事業引継ぎ支援センターが士業等の専門家を活用してマッチングする(三次対応)という活動をしています。
2011年から始まったこの取組は、2016年度に全都道府県で設置が完了し、これまで31,000件の相談を受け、累計で1,800件超の事業の引き継ぎを支援してきました(2018年9月末現在)。以前はM&Aというとネガティブな印象を持つ方が多かったと言われていますが、最近は事業承継に当たっての重要な選択肢として認識されており、近年では、相談件数、引継ぎ件数ともに前年度を上回る水準で推移しています。
なお、事業承継引き継ぎセンターには、プロジェクトマネージャー、サブマネージャー、相談員といった職員を配置しており、公認会計士、税理士、中小企業診断士等の士業の方々や、商工会議所、金融機関等のOBといったM&A及び中小企業支援の経験を有する方に就任して頂いています。また、三次対応等で専門家のアドバイスを仰ぐ際等には、例えば、企業価値の簡易算定などで全国の公認会計士の方々にご協力頂いています。」
2、事業承継ネットワーク
事業承継ネットワークとは、事業承継に向けた気付きの機会を提供し、その準備を促すことを目的に、平成29年度から開始した、都道府県単位で、商工会・商工会議所、金融機関等の身近な支援機関から構成される「事業承継ネットワーク」を構築する事業です。
「事業承継診断」等を通じた「プッシュ型」の情報提供を行い、事業引継ぎ支援センターやよろず支援拠点等の各種専門支援機関に繋いで、企業の課題に応じた支援を実施することになっています。
中小企業の支援機関として身近な存在である商工会議所・商工会、金融機関、士業等の専門家の協力のもと、経営者に「事業承継診断」を受けることを働きかけ、診断結果から掘り起こされた経営者のニーズに応じて事業承継計画の作成や専門家を派遣して個別の課題解決を図る取組である。
事業承継の準備に本格的に取り組んでいる経営者ばかりではないことから、まず、準備を始める重要性に気付いて頂き、準備を考えているがどのようなことをすればよいのかわからない、誰に相談すればよいのかわからないという経営者の不安に対して、プッシュ型(押し掛け型)で支援していくのが事業承継ネットワークの特徴です。
2017年度は19県で事業承継ネットワークが立ち上がり、年間49,899件の事業承継診断を実施(自治体独自の取組として事業承継診断を実施した4県を含めると年間52,100件)。
2018年度の事業承継ネットワークは44道府県に広がり、自治体独自の取組として事業承継診断に取り組む都府県を含めるとすべての都道府県で実施しています。
事業承継ネットワークの取組内容は、中小企業庁のホームページで確認できますので、ご参照下さい。
3、事業承継税制
事業承継税制については、簡潔に制度の内容が紹介されていましたので、そのまま以下に、引用させて頂きます。
「後継者の決定など、事業承継の準備が進み、いざ事業承継を実行する段階に至ったとしても、税負担が経営者の決断を躊躇させる要因になるという指摘があります。
事業承継税制は、中小企業の非上場の株式を先代経営者から後継者に贈与又は相続する際に課される贈与税及び相続税が猶予及び免除される特例制度です。
平成30年度税制改正において、事業承継税制の特例措置が創設されました。特例措置のポイントは、以下の4点です。
①猶予対象となる株式の上限が撤廃され、議決権総数のすべてが対象になりました。
また、相続税の猶予割合も80%から100%に拡充されました。
②対象者が、親族外も含む全ての株主から(2018年から一般措置においても対象)、複数後継者(最大3人まで)の贈与及び相続による承継が対象になり、複数の株主から複数の後継者への承継が可能になりました。
③5年間平均の雇用者数の8割を満たさなくても、その理由についての報告を行えば納税猶予の継続が可能になりました。
④廃業・売却時に、株式の評価額・売却額が株式等の承継時に比べて下落している場合は、その評価額・売却額に基づいて税額を再計算し、贈与・相続時の税額との差額を免除できるようになりました。
なお、この特例措置を受けるためには、2018年4月1日から2023年3月末までの5年間に経営承継円滑法に基づく特例承継計画を策定し、都道府県に提出して確認を受けることが必要です。その上で、2027年12月末までの10年間に、贈与や相続により実際に事業承継をして頂く必要があります。
2018年4月から特例承継計画の提出が始まっていますが、2018年9月末現在で600件以上が提出されています。
特例承継計画は、一度提出したにもかかわらず、実際には事業承継税制を活用しなかったとしても、ペナルティはありません。
今後、事業承継を控える経営者でも、非上場株式に係る税負担に不安を感じておられる場合は、是非、特例承継計画を作成することをお勧めします。」
4、事業承継補助金
事業承継の支援策の一つには補助金もあります。
事業承継補助金については、こちらの記事で詳細を記載していますので、参考にして下さい。
以下は、専門誌の引用となります。
「一般的に、経営者の年齢が若いほど投資意欲があり、生産性が増加する傾向があるといわれています。先代が守り続けた事業を引き継ぎ、それを維持していくだけでも、非常に厳しいことだと思いますが、チャレンジしていく事業を支援することも重要です。事業承継は、事業に磨きをかけ、生産性を高めていくチャンスともなりえます。事業承継補助金は、事業承継をきっかけに、後継者やM&Aにより事業を引き継いだ者が、経営革新、業態転換といったさらなる飛躍に向けた取組を行う際に活用することができる補助金です。
Ⅰ型(経営者交代タイプ)とⅡ型(M&Aタイプ)がありますが、いずれも設備投資、広報、マーケティング調査、既存設備等の解体・処分に要する経費など、幅広い経費が補助の対象となっています。」
5、経営力向上計画制度の改正による中小企業M&Aの促進
経営力向上計画を策定する時に、事業承継の場合の特典が設けられています。
経営力向上計画作成のメリットについては、こちらの記事、作成のポイントについては、こちらをご参照下さい。
事業承継に関する改正点は以下の通りです。
「2018年7月に中小企業等経営強化法が改正され、経営力向上計画に他の中小企業者等から事業を引き継ぎ、その経営資源を有効活用して経営力を向上させる取組も記載できるようになりました。
拡大された記載事項に対する支援措置については以下が講じられています。
①登録免許税・不動産取得税の特例(事業の引き継ぎに伴って土地・建物の権利移転が生じる場合、権利移転登記手続から生じる登録免許税・不動産取得税を一定限度で軽減する措置)
②許認可承継の特例(建設業、旅館業等一定の業許認可については、計画認定を受けた上で承継を実行すれば、当該許認可も承継される措置)
③組合の発起人数の特例(通常4人必要な発起人数が、3人でも可となる。)
④事業譲渡の際の債権者のみなし承諾(事業譲渡の際、債権者に対して1カ月以上の催告期間を設けて個別通知を行うことにより、免責的債務引受けの承諾を擬制できる。)」