最近、新聞等でAIによる融資先の分析、オンライン融資、銀行以外の融資業務参入の記事を目にすることがあります。
私も、実体験として、まだ数は多くはないですが、MFクラウドを使用しているお客様が実際にオンライン融資を使用しているケースを見ることがあります。
中小企業が銀行からの融資を断られた場合にも、インターネットを使ったサービスを利用した場合には、融資を受けられることは状況によってはあるのかもしれません。
一般的な銀行からの融資の場合には、書面で計画書等の申請書類を揃え審査を受けることになりますが、審査をする人の判断やその時に銀行内の状況、申請者が作成した事業計画書の内容や面談時の代表者の受け答え等によって、融資の結果が変わることがあるからです。
また、銀行からの借入をする場合には、手続き、審査に時間がかかります。急に資金繰りが厳しくなった場合に備えてインターネットを使った融資サービスの方法を知っていることは役に立つ可能性があると思います。
ここでは、インターネットを使った融資サービスの方法をまとめてみます(インターネット上の資金調達方法ともいえるクラウドファンディングは除きます。)。
目次
1.オンラインレンディングとは
まずは、インターネットを使った融資方法のことは「オンラインレンディング」と言います。「データレンディング」と言われることもあるようです。
オンラインレンディングは、「ビッグデータ」と「AI(人工知能)」を活用し、人手をほとんど使わず、数百項目のデータを分析し、融資判断を行う融資サービスです。オンラインレンディングは、いくつかの種類に分かれますので、主な種類と内容を以下に記載します。
1.1 AIスコアレンディング
AIがその企業や個人の将来的なリスクや、返済の可能性を判断して、信用力の数値化を行い、融資額や融資条件を自動的に決定するというサービス。
代表例は、みずほ銀行とソフトバンクにより設立されたFin Tech企業のJ.ScoreによるAIスコア・レンディングhttps://promo.jscore.co.jp/lp/app/
J.Scoreのサイトは、面白く、将来の融資サービスを知る上で分かりやすいので是非見てみて下さい。
J。Scoreでは、簡単な質問に答えるだけで、個人の可能性を総合的に分析してスコア化するというサービスをしています。スコア化は無料ですので、関心がある方は勉強のために試してみるのも良いと思います。
1.2 トランザクションレンディング
今の時代では、楽天モール、AmazonマーケットプレイスのようなECサイトで商品を販売する会社は多くあると思います。
トランザクションレンディングは、このようなECサイトの取引データを元に審査を行う融資サービスです。
ECサイトにおける売上のデータや、決済サービスにおける決済のデータをAIが分析することで、融資の審査をします。
代表例としては、以下のようなサービスが挙げられます。
・楽天スーパービジネスローンエクスプレス
➡楽天カードが提供する「楽天市場」に出店している事業者様(法人・個人)向けローンサービスです。24時間Web上で申し込みが可能です。利用可能枠は50万円~3,000万円で利用可能枠内なら繰り返し借入が可能、資金用途は自由で、担保・保証人は不要です。実質年率は3%~15%。
・Amazonレンディング
➡Amazonマーケットプレイスに参加している法人の販売事業者向けの短期運転資金型ローンサービスです。副業でAmazonマーケットプレイスで販売をしていて売上が伸びた方が個人事業主から法人化というケースを見ることがあります。このような方のビジネスの成長を支援するために、必要とする資金を必要とするタイミングで提供してくれます。最大で5,000万円までの融資が可能なようです。金利は9.9%~13.9%。
・リクルートパートナーズローン
➡じゃらんnet、ホットペッパービューティー、ホットペッパーグルメ、SUUMOで一定の取引のある法人が利用することができるサービスです。
借入限度額は最大で3,000万円。最短で当日の入金が可能のようです。無担保、無保証で金利は2%~14%。
・GMO-PGトランザクションレンディング
➡GMOの決済サービスを利用している法人が利用できるサービスです。借入限度額は最大で3,000万円。無担保、無保証で金利は2%~15%。
1.3 バランスシートレンディング
ネットバンクやクラウド会計ソフトから確認できる入出金の状況データから融資の審査を行うオンライン融資サービス。
クラウド経由で送られてきた簿記データをAIが分析して信用力を見極める。
代表例としては以下のようなサービスがあります。
・MFクラウドファイナンス
➡私が実際にお客様が利用しているのを見た事があるサービスはこれですね。
MFクラウドを利用している会社は、銀行口座を自動連携させていて、リアルタイムで取引が帳簿に反映されますし、残高も確認できます。
この情報を利用して、MFクラウドを運営しているマネーフォワードと提携している金融機関が融資を行います。
ファイナンス商品一覧を見ると、現在ある商品は、GMOイプシロン トランザクションレンディング、福岡銀行ファストパス、福井銀行ビジネス応援ローンQ-pitの3つ。
それぞれで内容が異なるので詳細はこちらでご確認頂ければと思います。最短即日や審査書類が不要といったオンライン融資サービスの良い点があることには変わりはありません。
・アルトアオンライン融資サービス
➡アルトアは弥生株式会社の子会社です。弥生会計を利用している事業者向け融資サービスになります。借入可額は50万円~300万円。スモールビジネスで弥生会計を使っている方向けのサービスですね。
1.4 P2P融資(個人向けソーシャルレンディング)
P2Pは、Peer to Peerを略したもので、個人同士の融資という意味あいになります。
個人同士がプラットフォーム内でマッチングされお金の貸し借りをするものです。
「インターネットを経由して資金の貸し借りをする」という側面からすると、P2Pレンディングはソーシャルレンディングと同じ位置付けになりますが、P2Pレンディングは純粋に個人間での資金の貸し借りである反面、ソーシャルレンディングは事業者が資金の受け手と借り手との間に入り、ファンド(匿名組合)の組成を行った上で融資を行う点が異なります。
日本ではmaneoがP2Pレンディングに参入していますが、個人向けサービスからは撤退しているように普及は進んでいないようです。
1.5 プラットフォームに依存しないオンライン融資(Lendy)
楽天モール、AmazonマーケットプレイスのようなECサイト、MFクラウド、弥生会計のようなクラウド会計ソフト、GMOのような決済サービス、オンラインバンク、POSレジ等と連携を行い、連携先のデータを使って審査を行うオンライン融資サービスです。
法人だけでなく個人事業主も利用可能です。融資額は10万円~500万円まで。利率は、融資額100万円以上の場合には8.0%〜15.0%で、融資額100万円未満には、13.0%〜18.0%です。
アカウント登録後5分で借入限度額が分かります(すごい!!)。
Web上でいつでも申込が可能で、借入枠は何度でも使うことが可能です。
2.オンラインレンディングのメリット・デメリット
上記で見てきたオンラインレンディングによる融資は、金融機関からの融資と比べていくつかのメリット、デメリットがありますので、メリットデメリットをまとめてみます。
2.1 オンラインレンディングのメリット
(1) 融資の審査スピードが速い
融資の時に提出する書類が少ないため、準備するための時間が少なくて済みます。個人の方であれば住宅ローンを申し込んだ経験があれば分かるかもしれませんが、銀行に提出する資料を揃えるのは結構な手間がかかります。
また、融資の審査も。ECサイトの売上データ、クラウド会計の会計データ、決済情報をもとにAIが判断するため、審査スピードが圧倒的に速いです。
サービスによっては、5分で審査結果が提示され即日振込も可能です。スピードを重視した場合の資金調達の場合にはとても便利だと思います。
(2) 金融機関の融資担当者の腕に左右されない
金融機関の融資では、担当者が「融資稟議書」を起案し、それを上長が審査することで決定がされます。金融機関から融資を受ける場合には、経験が浅く柔軟な判断ができない等、質が低い方が担当者になってしまう可能性がある事を否定できません。そのような場合には、希望金額を減額されるなど、期待通りの結果を得られないことがあります。
オンラインレディングではAIが独自の審査基準とリスク判定によって審査を行うため、金融機関のように担当者の手腕や、やる気によって審査結果が左右されるということは起きないでしょう。
(3) その他
オンライン融資サービスによっては、個人信用情報(CIC等)を参考にしません。やむを得ない事情によって過去に借入金の返済ができていない方などであっても、個人情報には履歴として残ってしまい、銀行からの融資を受ける時には難しくなります。そのため、個人信用情報に問題がある方でも現在の状況次第では融資の可能性があるといえます。
2.2 オンラインレンディングのデメリット
オンライン融資サービスの金利は銀行からの通常の融資と比較するとやはり高いサービスが多いですね。
ただ、スピードを重視した短期間の借入を必要としている場合に使うケースが多いと思いますので仕方がないかもしれません。書類を揃えたりする時には時間や費用もかかりますので。
また、デメリットとはいえないかもしれませんが、オンライン上のデータを基にAIが判断するのは良いと思いますが、本来は会社の事業の状況を数値だけでは分からない部分を含めて金融機関の融資担当者や、税理士事務所の先生は相談にのったり指導をすべきだと思います。
「主要の得意先との取引が2年後になくなる予定だ。」
「今年は震災やオリンピックの特需で一時的に好調だ。」
「将来性のない事業から新規事業にシフトをする予定で、今年は営業をおさえている。」
「来期からは経営改善のために人件費のカット、経費の削減、営業所などの縮小をし利益の改善が見込める。」
例を挙げればきりがありませんが、このような時には事業計画、経営改善計画を作成することがとても大切だと思います。機械の判断には限界があると思いますが、今後はどうなるのでしょうかね。